令和3年5月29日(土)、令和3年度「防犯ボランティアのつどい」が開催されました。
毎年、都内各所のホールや会議室などで行われてきた本イベントですが、今年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、初のオンラインでの開催となりました。
東京都庁内の会議室から、パソコンにカメラやスピーカーを接続して映像と音声を配信し、参加者は自宅等にいたままパソコンやスマートフォンを使って視聴します。
イベント開始の午後1時が近づくと、参加者が次々と視聴サイトに接続してくるのがわかります。進行役を務めた都民安全推進本部 都民安全推進課 安全・安心まちづくり担当の不破野課長代理が「映像は見えていますか? 音声はどうでしょうか?」と呼びかけながらイベントがスタートしました。
参加したのは、都内各地で日頃から熱心に防犯ボランティア活動をされている方々等。
まずは同本部都民安全推進課 安全・安心まちづくり担当の藤原課長の挨拶。
「現在、コロナによる経済不況や長引く外出自粛による閉塞感で、社会全体がストレスフルになっています。そんな状況のなか、粗暴な犯罪が増えたり、その矛先が子供や高齢者など弱い立場の人に向かうことを、誰もが心配しているはずです。皆さまの活動が、このコロナ禍においても、ますます必要とされているんだなということを実感します。とはいえ、今は活動を自粛あるいは制限されている方もいらっしゃるでしょうし、ボランティア団体の高齢化や後継者不足も、とても大きな課題となっています。私たち東京都は、地域の安全・安心を支えてくださっている皆さまのボランティア活動を今後も支援していくとともに、より幅広い世代の皆さまに参加していただけるような取組を進めてまいりたいと考えております。皆さまには引き続きご協力をお願いしますとともに、貴重なご意見などをお寄せいただければと思っております」と、藤原課長はコロナ禍における防犯ボランティア活動の重要性について話しました。
第1部は、不破野課長代理が講師を務め、さまざまな情報が得られる本サイト「大東京防犯ネットワーク」の使い方についてのレクチャー。メインは、今春から本サイトに追加された2つのマップ――(防犯活動の)「情報投稿マップ」と「みまもりぃぬとつくろう 安全安心マップ」についての説明です。
前者の「情報投稿マップ」は、防犯活動に関する実施結果やお知らせを自由に投稿することができるマップです。投稿内容は、活動日時や活動内容等に加え写真も3枚までアップすることができるとのこと。
活動した結果を投稿することで、グループの活動を日記のように残すこともできますし、投稿した内容を地域住民の方が見れば安心感の醸成にもつながります。
また、今後の活動の「お知らせ」を投稿することが可能で、防犯活動の参加者の募集告知などにも使えます。
本サイトトップページ中段の「情報投稿マップ」のアイコンからアクセスできます。
上記ページから「投稿された情報を見る」に進むと、このようなページが表示されます。
続いて不破野課長代理が説明してくれたのは、「みまもりぃぬとつくろう 安全安心マップ」。
小学校等で実施されている地域安全マップづくりに活用することができるマップです。「入りやすい場所」「見えにくい場所」などを表すアイコンや、「交番」「子供110番の家」など、いざという時に子供が助けを求められる場所を表すアイコンがたくさん用意されており、同アイコンを地図上の任意の場所に自由に書き込むことができるというものです。
地図上に線を引いたり、文字を入れたりすることも可能。データの保存や印刷ができる点も便利です。
不破野課長代理は、「どちらも開設したばかりで、まだ多くの方に利用していただいているという状況ではありませんが、皆様の防犯活動に活用できるマップですので、ぜひ利用してください」と紹介していました。
第2部は、「うさぎママのパトロール教室」を主宰する安全インストラクター武田信彦さんによる講義。「市民防犯」を提唱し、幅広い世代に安全・防犯を伝えています。
武田さんはまず「警察による防犯と、市民の防犯とは別物。警察のそれが“直接的防犯”だとするなら、市民のそれは“間接的防犯”です。私たちの防犯は、武器の所持や権限の行使を伴わないから」と話します。
一般市民の防犯が目指すこととは、
①犯罪が起きにくい環境づくり
②助け合いの環境づくり
であり、そのために重要なのは「笑顔と挨拶の見守り」だと言い、次のように続けました。
「一般市民が行う防犯で大事なのは、子供たちや地域の人々に目を向けて、笑顔や挨拶を増やすこと。そして、目立つことも重要。カラフルな帽子やベストを着用して、街で活動することが効果的。防犯活動を行う姿そのものが、犯罪から子供たちや地域を守る“バリア”になるからです」
加えて、子供を守る防犯活動は不可欠であり、今はまさに「待ったなし」の状況にあるとし、これまで以上の努力を継続すべきだと説きます。なぜなら、日本は諸外国に比べて圧倒的に、“子供だけで行動する機会”が多いから。
「日本では、『行ってきます!』と『ただいま!』の声とともに小学生が通学するのが当たり前ですが、この光景は国や社会によってはあり得ないものです。とくに欧米では、身を守る力が弱い子供には、常に大人が付き添うことが防犯的スタンダードな考え方です。一方、日本では、子供が徒歩で通学する「地域育て」と呼ばれるような習慣があり、さらに、年々保護者のライフスタイルも多様化し、「子供だけ」になる機会が増えています。」
そして、子供が狙われる犯罪の多くでは、「子供だけ」の状況でリスクが高まります。
子供の防犯上、保護者の付き添いが最大の防犯力となり得ますが、一億総活躍が推進される時代、身近な大人が24時間ずっと付き添うのは不可能な現状です。そこでもとめられるのが地域の力、つまり防犯ボランティアの皆さんの協力なのだと武田さんは強調します。
「大切なのは、子供自身、大人、地域の3つの力や意識を結集すること。そして、子供が子供だけになりやすい『空白の瞬間』を減らす努力をすることです。ときどき『地域の犯罪認知件数が減ったのだから、見守りはしなくていいのでは?』との声を聞きますが、私はそうは思いません。子供だけになりやすい環境は、日本中で発生しています。そして、悪意や犯意がいつ実行されるのか予測がつきません。『安全だ』と決めてしまうことで見守りの力が弱まれば、犯罪発生のリスクを高めてしまうことにつながります。データなどの犯罪情勢は防犯活動上のヒントになりますが、より重要なこととして『子供だけ』になりやすい環境が増えていることを忘れないでほしいのです」
最後に武田さんは次のように見守りが生み出す効果と可能性について話してくれました。
「近年、学生防犯ボランティアが増加しています。そして、研修会には中学生も参加してくれるようになりました。中学生といえば、本来なら“見守られる側”のはずです。それが“見守る立場”になってくれようとしています。学生のみなさんが地域防犯に関われるようになったのは、“見守られている”環境があったからです。本日参加されているボランティアのみなさんが、長年見守り活動を続けてきたことで道筋を作ってこられました。そして、頼れる大人たちの背中を見てきた子供たちは、見守りや助け合いの大切さを受け継いでいるのです。笑顔や挨拶の種まきは、確実に花開いてきています。これからもぜひ、素晴らしい活動を続けてください!」
武田さんのこのメッセージは、参加者の皆さんの胸に深く刻まれたことでしょう。
今回の「つどい」はオンラインでの開催のため、例年実施していた参加団体の活動内容の紹介やメンバー同士の交流は難しい……と思いきや、そうではありません。武田さんがファシリテーターとなり、参加者の方に普段の活動内容や団体活動継続のコツ、今後の展開等をインタビューし、そのやり取りを参加者全員で視聴するという方法で、参加者間の交流が図られました。
まず初めに武田さんのインタビューに答えてくれたのは、文京区でわんわんパトロールに取り組んでいる文京わんわんパトロール隊の江頭さん。犬を連れてパトロールすることのメリットをこう話してくれます。
「毎日の散歩のついでなので、まったく苦になりません。メンバー個人が行うパトロールでは、小学校の登下校や塾からの帰宅時間に合わせて散歩している人もいます。目立つ服を着て、バンダナを巻いた犬と一緒に歩いていると、周りの人にもすぐにパトロールしているということが分かりますし、初対面の人や子供たちとも話しやすいんです。」
そのほか、ジョギングを趣味とする人が街を走りながらパトロールする「パトラン」に取り組んでいるパトラン東京の渡部さん、新宿区内の小学校に勤務している教員の方、防犯ボランティア活動に取組んでいる大学生など、様々な立場で防犯活動を行っていただいている方たちがインタビューに協力してくれました。このように様々な団体の方の話を聞けるのも本イベントの魅力の一つです。
ここまでで、開始から3時間以上。初めての試みだったオンライン開催による「防犯ボランティアのつどい」でしたが、心配していた不具合が起きるようなこともなく、無事に終了することができました。
コロナ禍により直接顔を合わせて交流することは出来ませんでしたが、インターネットというツールを使うことで、お互いの顔を見ながらオンラインで繋がることができ、新しい形の「防犯ボランティアのつどい」は大成功で幕を閉じました。
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