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「子供防犯教育人材育成事業」

 令和2年11月14日(土)、国分寺市立第五小学校で令和2年度「子供たちを犯罪から守るための大人向け防犯講座~子供達に、何を、どう伝えますか?~」が東京都都民安全推進本部の主催で行われました。この講習会には、同校の教諭や保護者に加え、普段から同校の通学路などで子供たちの見守りを行っている町会の方など70名ほどが参加し、実りのある時間を過ごしました。
 なお、本講習会開催にあたっては、会場を体育館にし、席の前後左右の間隔を空けるとともに、常時換気を行う等の新型コロナウイルス感染症対策(3密対策)を講じた上で実施しました。

子供防犯教育人材育成事業

 この日講師を務めたのは、NPO法人日本こどもの安全教育総合研究所理事長の宮田美恵子さん。犯罪から子供を守るためにはどうすればいいかというテーマで講義が進められました。
「学校安全といっても、学校や教師だけがやるものではありません。大切なのは、地域の方々と保護者も一体となって、みんなで安全をつくるという気持ちで行動すること。もちろん、日々の見守り活動も欠かせません」
 現在、日本国内の犯罪認知件数は平成14年のピーク時に比べ、およそ3分の1にまで激減し、現在も減少し続けています。素晴らしい成果だと宮田講師は言います。
「犯罪総数自体は、明らかに減少しました。これは、警察や行政をはじめ防犯ボランティアの方たちが、さまざまな努力を重ねた成果です。ですが、心配なことが一点あります」
 それは、子供をターゲットにした略取誘拐事件のこと。小学生の場合、ここ10年ほどは毎年50~60件発生しており、それ以前から見れば横ばいまたは微増といえる状況にあるのだそうです。

宮田 美恵子 講師
宮田 美恵子 講師

 ここから宮田講師は、実際に起きた二つの児童を狙った凶悪事件――平成26年・兵庫県での事件と、平成30年・新潟県での事件――を例にあげつつ、自ら現場を訪れて撮影した写真を示しながら話を進めていきます。どちらも、被害者が加害者に遭遇してしまったのは下校時でした。
「二つの事件に共通しているのは、被害者の女児が下校時に一人だったことです。神戸の女児はいったん祖母の家に寄ってから再び外出したときですから厳密には下校時ではありませんが、いずれにせよ単独で行動していました。この“一人でいるとき”が、実は最も危険なのです」
 現在、多くの学校が集団下校を採用しています。しかし、どこかで友達と別れて、必ず一人になる場所があります。そこから自宅までの“一人区間”が盲点であり、新潟の事件が起きたのは自宅までわずか数分の場所でした。
では、どんな対策が有効なのでしょうか。
「犯人は人の目を嫌いますので、子供たちが下校する30分だけでも1人区間に見守りの目を創り出したいのです。それには、組織活動で地域を見守る方々にではなく、むしろご近所の方たちの力を借りるのがベスト。たとえば、その時間帯だけ近所のお店の方に店頭に出てもらったり、家の前に椅子を置いて座っていてもらうだけでもいい。これを見守りベンチ(やイス)の取組と言います。そうして、一人区間に見守りの目を創り出し、地域全体で見守るコミュニティーを形成することが、犯罪の防止につながるのです」
 集合住宅に住んでいる子供の場合なら、エントランスを入って自宅に至るまでの廊下や階段、あるいはエレベーター内なども“一人区間”になり得ます。声かけ事案のおよそ40%は自宅のすぐそばで起きたというデータもありますから、やはり誰かの“目”があることだけでも、子供たちにとっては大きな安心になるのです。
 また、学校・保護者・地域が協力して見守るとともに、子供たち自身の対応力も必要。そのため宮田講師は「たとえば登校の直前に、防犯ブザーを鳴らさせることを習慣化しておくだけでも、意識が高まります」と、いざというときの対応を子供たちに意識づけしておくべきだと言います。

教諭との質疑応答
教諭との質疑応答

 宮田講師は、参加者に対し、「子供たちに不審者とはどんな人かと尋ねられたら、どのように教えていますか?」と問い掛けます。講座に参加していた教諭からは「不審者とは何か、不審者と不審でない人との区別をどう教えればいいのか」という点について、児童に指導する際、日頃から難しいと感じていたとの声がありました。
 この点について宮田講師は、見かけではなく行為で判断するのがいいと言います。
「イラストなどを使って指導するとき、不審者の外見は必ずといっていいほど黒ずくめの上下に黒サングラスといった姿です。もちろん、こんな服装をしている犯人ばかりではありませんし、実際の事件は約半数が『知っている人』によるもの。つまり、見かけでは判断できないわけです。ですから、ジロジロ見てくるとか、近付いてくるとか、体やランドセルを掴んでくるとか、子供自身が『怖い、嫌だ』と思う行為を相手がとってきたときに気をつける必要があると教えるべき。」と、宮田講師と説明してくれました。

参加者は皆、講師の話に真剣に耳を傾けています
参加者は皆、講師の話に真剣に耳を傾けています

 宮田講師は続けて、最も注意すべきポイントを教えてくれます。それは、「今いる場所から移動しない」ということ。
「子供を連れ去ろうとする人物は、さまざまな言葉で誘惑しようともします。欲しい物を買ってあげる、かわいい子犬を見せてあげるなどと言われれば、小さな子供ではなかなか断りにくいものです。たとえば今だったら、『お母さんがコロナで病院に運ばれたから一緒に行こう』と誘ってくるかもしれない。こういう危険な行動や誘い方の実例をいくつもあげて、具体的に教えるのが良い。」と宮田講師は話します。
 誰かに道を尋ねられても一緒に行かずに、その場で教えるようにすること。さらに大事なのは、『車には絶対に乗らない』ということ。乗ってしまったら、子供が逃げ出すのはまず不可能だからです。
「保護者が、普段からお子さんと防犯についてよく話すことも大事です。家族以外の人の車には絶対に乗らないなど、“わが家のルール”を決めておくことはとても重要。そういう会話が、大切な命を救うことになるのですから」
 およそ2時間。静かな口ぶりではあるものの熱のこもった宮田講師の講義には、会場から大きな拍手が沸いていました。

会場の国分寺市立第五小学校の校内に掲示されている「みまもり隊おはようMAP」同校の周りでは、多くの方たちが子供たちを見守ってくれています。

会場の国分寺市立第五小学校の校内に掲示されている「みまもり隊おはようMAP」
同校の周りでは、多くの方たちが子供たちを見守ってくれています。

 最後に挨拶に立ったのは、同校の竹泉稔校長です。
「普段からあまり考えていなかった大事なポイントに気づかされるお話でした。子供たちにどう指導したらいいのかという点についても、もう一度あらためて考え直してみようと思います。当校の地域はとても恵まれていまして、近隣の皆さんがいつも角々に立って見守ってくださっています。未来ある子供たちを守り、そして国分寺を住みやすい街にするためにも、今後もぜひ継続していただくようお願いいたします」
 学校周辺では、新たな幹線道路の建設が進められているなど、時の流れとともに、街の様子は少しずつ変わってきているけれども、子供たちの安心・安全を守ろうという地域の輪は不変であってほしい――そんな願いが込められていました。

竹泉稔校長
竹泉稔校長