5月26日(金)午後7時「池袋西口駅前環境浄化推進委員会」の防災資器材格納庫の前に集合した環境浄化委員会の方々は、簡単な打ち合わせを済ませると夜の顔を見せ始めた繫華街・池袋へとパトロールに向かっていきます。
今回は、月に2回実施されている池袋西口駅前の「環境浄化パトロール」に同行しました。
毎回、この地域の町会、店舗の方、区役所や警察署の職員などが大勢集まるとのことで、この日も30名以上の参加者による官民合同のパトロールが開始されました。警備会社のガードマンが先頭に立ち、違法な客引きや路上喫煙への注意喚起を広報しながら進みます。それに続いて、三菱地所、サンシャイン等の企業の方、曙町会、そして、池袋北口駅前商店街、池袋西一番街商店街、西池袋エビス通り商店街、池袋西口ロマンス通り商店街、池袋西口駅前名店街、池袋北口駅前商店会など町会や商店街の方、池袋警察署や豊島区役所の職員も加わります。
その中には、豊島区のご当地アイドル宇崎真里愛さんと所属会社LBS@MUSICグループの社長やタレントさんたちの顔も見えました。
芸能会社に所属する彼女たちが、なぜこうした活動を始めることになったのか、所属事務所LBS@MUSICグループ代表の加藤貴行さんに話を聞きました。
もともとバンドマンだった加藤さんが「夢を目指したいのに諦めてしまう人が多いが、夢があるのは素敵なことなので諦めないで」との考えの下、約10年前に芸能プロダクションを池袋に構えると、アイドルや声優を志した若い子が集まってきました。しかし、他人とコミュニケーションを取るのが苦手な子が多かったので、どうすれば良いか考えた結果、手始めに事務所の近辺を掃除することから始めたそうです。しばらくすると、当時の事務所があった平和通り商店街の理事長から防犯パトロールに誘われ、それに迷うことなく参加したことをきっかけに、池袋で行われるさまざまなイベントにも参加することができるようになり、徐々に活動の幅も広がってきたそうです。
「今では、所属タレントの宇崎真里愛については、防犯バッジのポスターのイメージモデルとして起用していただいたり、『豊島区としまみどりの防災公園』の広報大使や豊島区国際アート・カルチャー特命大使を務めさせていただいたりするなどしており、彼女は、豊島区の“ご当地アイドル”といえる存在になることができました。そして、今年(2023年)には、豊島区防災危機管理課と一緒に『としま防犯アイドル』という名称も考えていただきました。」
宇崎さんからは、防犯について考えるきっかけを聞いてみました。
「私が初めて一人暮らしを始めたのは池袋でしたが、母は、『池袋って、危ないんじゃないの?』と心配しました。実際は住みやすい街ですが、若い女性が怖い思いをしてしまうこともあるので、その点は改善できたらいいなと思って活動しています。」
「怖い思い」とは、いわゆる“つきまとい”や、しつこいナンパ行為、風俗店のスカウト行為などのことを指します。
「多い日には、池袋の西口から東口まで歩く間、ずっと声をかけ続けられたこともあります。一人を断ってもすぐに次が来る、断ると暴言を吐かれたり、なかには体を小突いてきたりする人もいました。」
こうした迷惑行為を防止するため、宇崎さんたちは、警察や防犯協会の協力を得て、『女性のための防犯バッジ』を作成して頂いたのです。
「これを肩や腕に着けておけば目立ちますし、ちょっとした仕掛けもあるんですよ。」
そういって宇崎さんがバッジの中央部分を押すと、警報音が鳴り響きます。実はこのバッジ、防犯ブザーも兼ねている優れものでした。
続いて、池袋西口駅前環境浄化推進委員会の皆さんに話を聞きました。「以前に比べて、池袋はずいぶんきれいになりました。しかし、過去には、ちょっと困った時期もあったんですよ。」そう話すのは、商店街の会長や町会役員の皆さんです。
「ある時期、池袋を舞台にしたテレビドラマが放送されたことがきっかけとなり、若い子達が夜遅くまでたむろする時がありました。そのせいで街の雰囲気が悪くなってしまい、ブームが過ぎ去るまでのしばらくの間は、困った状況が続きました。そのときも商店街の皆でどうにかしようと立ち上がり、パトロールや声掛けなどを行いました。」
環境浄化パトロールは約40~50分かけて、アルコールを提供する飲食店、客引きが多い地区を重点的に回ります。途中、歩道にはみ出した看板を敷地内で掲示するよう依頼したり、路上喫煙している人への注意を行ったりします。
参加していた、豊島区役所治安対策担当課長の三國智史さんは、「こうしてパトロールすると、区民の皆さんの声を直接聞くことができるので、毎回欠かさず来ています。どんな小さな声でも、私たちにとっては貴重なご意見なので」と話してくれました。
同じく参加していた、池袋警察署生活安全課長の佐藤正士さんは、「街の安全・安心づくりには、官民一体となることが重要ではないでしょうか。池袋をよりよい街にするため、警察としても可能な限り協力していきます」と力強く話してくれました。
パトロールが終わると宇崎さんは、「街の掃除をしてきれいになると、犯罪が減るということを知りました。私ひとりの力は小さいですけれど、池袋のためになることなら何でもやるつもりです。“防犯アイドル”と呼ばれるのも良いかもしれませんね」と笑顔を見せてくれました。
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