12月8日、警視庁交通安全教育センター(世田谷区)で本年度の青パトセミナーが開催されました。当日は残念ながら雨天でしたが、都内各所から14台の青パトと28名のドライバーが参加してくれました。
第一部はセンター内での座学、第二部はコースに出ての実践(安全運転講習)という二部構成のプログラム。初めに挨拶に立った、都民安全推進本部の藤原朋子担当課長は、参加者の皆さんの普段の活動に謝意を述べるとともに、次のように話しました。
「このセミナーは、都内で青パト活動をしている皆さんを応援するイベントとして、平成24年から毎年開催しているものです。平成16年の道路運送車両の保安基準の改正で、地域で防犯活動をしている民間車両などに青色回転灯を装着して走行することが可能になって以降、青パトは全国で普及するようになり、都内でも現在800台近い青パトが活躍しています。昨年来のコロナ禍によって、人が集まることを避けねばならなくなったことで、防犯ボランティアの皆さんの活動も大きな影響を受けました。しかし、“密”になりにくい青パトは、以前と変わらない活動を継続していたとお聞きしています。緊急事態宣言下では、外出自粛要請により、夜8時になれば街の灯りが消え、誰も外を歩いていないような状況のなか、青パトの青い回転灯を見た住民の方々がどれほど安心したかと考えると、皆さんには本当に頭の下がる思いでいます。本日のセミナーの内容をご参考に、今後もぜひ活動を続けていただくようお願いいたします」
第一部は「うさぎママのパトロール教室」を主宰する、安全インストラクターの武田信彦さんによる講義。武田さんは、大学在学中に、渋谷や池袋といった繫華街で活動する犯罪防止NPOの活動に参加して以来、現在に至るまで自身の経験をもとに「市民防犯(一般市民ができる防犯)」を提唱し、全国各地で講演やワークショップを実施する講師として活躍しています。
本セミナーでは
青パトが育む!地域の安全と安心!
~市民防犯の意義と効果、大きな可能性とは~
の題目で講義が始まりました。
最初に、「防犯には2種類あるといえます。ひとつは警察防犯。もうひとつは市民防犯です。両者の違いが何かといえば、『警察防犯』では、権限の行使や武器の所持などをとおして犯罪抑止の面が強いといえます。一方、私たちが取り組む『市民防犯』が目指すことは、犯罪が起きにくい環境づくり、さらに、地域住民同士の助け合いの雰囲気づくりです。この違いを、はっきりと認識することが重要です。」
「パトロール中に重要なことは、目を向ける先です。犯罪企図者や不審車両などに目を光らせるのは警察の役割。防犯ボランティアは、地域住民や子どもたちへ目を向けることが役割です。その姿そのものが、犯罪が起きにくい環境を広げていきます。強さや厳しさよりも、優しい眼差しの『見守り』がもとめられるのです。」と市民防犯の立ち位置を説明しました。
それでは、青パトが走るべきなのは、どんな場所なのか。それは、「空白ができやすい場所」。女性や子供を狙った犯罪は、「ひとりになる」「子どもだけ」になる瞬間に発生しやすい傾向があるため、活動時間内やエリア内のどこがそれに該当するのか。日ごろから地域を観察するとともに、警視庁や東京都が提供する犯罪発生情報などからも情報を得て、活動エリアを設定しておくのもポイントです…とわかりやすく話してくれました。
次に、青パトのドライバーが気をつけておくべき、3つの基本事項を再確認しました。
①運転免許証の確認をしよう
(期限切れなどに注意)
②やさしい運転をしよう
(模範的な運転は、交通安全啓発にもなる)
③活動を知らせよう
(近隣住民に、青パトの存在を認識してもらう)
そして、防犯パトロールで最も大事なのは「笑顔と挨拶」だとし、「青パトの場合、車両のために地域のみなさんや子どもたちとの間に隔たりがありますが、防犯活動中には、道行く人になるべく挨拶するようにしてください。挨拶や健全な声かけは、心への種まきとなり、次世代へのメッセージとして、未来に花が咲きますから」と話し、会場から大きな拍手を受けました。
最後に、武田さんは場内にマイクを向け、「皆さんは普段、どんな活動をしていますか」「やりがいやエピソードなど、どんなことでもいいので教えてください」と参加者に水を向けると、ふたりの方が快く応じてくれました。
調布市ふじみパトロール隊の三浦信一さん
「私たちは、毎日の小中学校の登下校見守りに加え、週2回、青パト運行をしています。この年末年始には、拡声器を使って特殊詐欺撲滅パトロールも行う予定です。定期的な活動のほかにも様々な活動にチャレンジすることが、マンネリ化を防止して長く活動する秘訣です。また、以前から学校との連携が強いこともあり、運動会などの行事の際には自転車置き場の整理係を引き受けたりもしています。少しずつではありますが、こうした積み重ねで住民の防犯意識を高めることができればいいなと思ってやっています」とのことでした。
高井戸東地区防犯パトロール隊の杉山卓男さん
「隊を発足して14年、その間、子供見守り拠点の設置、青パト導入という大きな節目がありました。このコロナ禍で外出を制限されるなか、地域のお父さんたちが夜間の青パト運行を継続してくれたことは、有難い限りでした。子供たちを見守ると同時に、その子供たちに対して『見守りとはどういうものなのか』を活動を通じて教えつつ、私たち大人も一緒に学ぶという心構えでやっています。同時に、いろいろなイベントも行っているのですが、その内容は子供たちと一緒に考えます。今は大学生になった子供たちも自然に参加してくれます。それだけでも、なんとなく報われたなという気持ちになっています」と感慨深げに答えてくれました。
おふたりに共通しているのは、「こちらから挨拶しても、最初の頃は無視する子供が多かった。そういった子供にも根気強く挨拶を続けていくうちに、今では、子供のほうから元気に挨拶してくれる」という点。これはまさに、武田さんが言う「笑顔と挨拶の種まき」が実ったことの証明なのかもしれません。
第二部は、警視庁交通部指導員の指導のもと、屋外に出ての実地訓練です。雨足が弱まる気配はなく、多摩川河川敷のコースには大きな水たまりもできていましたが、指導員から「こんなコンディションだからこその訓練!」と急ブレーキの課題が与えられました。
直線コースを使って時速40kmまで加速し、目印のセフティーコーンが置かれた地点で急ブレーキをかけて停止するというものですが、これがなかなかの難題。目印よりはるか手前でブレーキを踏んでしまったり、逆に通り過ぎてしまったりと、うまくいかない参加者が続出しました。
一人当たり2回ずつ走行したところで、指導員から「合格だといえるのは2名だけ。あとの方は、まだまだ踏み込みが足りません。そんなことでは、いざというときに反応できませんよ」と手厳しい言葉。
そして再トライ。今度はコツをつかんだようで、ほとんどの参加者が急ブレーキを踏んで停止できていました。次は信号機に反応して急ブレーキをかける訓練が行われました。
こちらは、参加者が前方にある赤信号の点灯に反応して危険を察知(反応時間)し、アクセルからブレーキに踏み変えてブレーキが利き始めるまでの走行距離(空走距離)と、ブレーキをかけてから完全に停止するまでの距離(制動距離)を体験してもらいました。
最後は、指導員から「あらかじめブレーキを踏む場所が分っていてブレーキを踏むのと、反応してからブレーキを踏むのでは、反応時間が長くなる分、車が停止するのに時間がかかるということであり、事故につながりやすい。そのため、普段から周囲の状況に注意して運転し、なるべく急ブレーキを踏むような状況がないようにする必要があります。皆さんは青パトというパトロールカーのドライバーです。今日の経験を活かし、スピードの出しすぎなどしないよう、模範運転で、事故なく防犯活動に従事してください。」との言葉で締めくくられ、ほぼ4時間近くに及んだセミナーもここで終了しました。
参加者からは、「ふだん、急ブレーキなど踏むことはめったにないので、貴重な体験ができました」との感想が聞かれました。
皆様、雨と風、そして寒さのなかで大変だったでしょうが、長い時間お疲れさまでした!
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