令和3年3月、本サイト内において運用を開始した「みまもりぃぬとつくろう 安全安心マップ」
地域の危険箇所(犯罪や交通事故が起きやすい場所)や危険を感じた時に助けを求めることができる場所(交番や子供110番の家)等を、アイコンなどを使って簡単にマップ上に書き込むことができ、オリジナルの地域安全マップを作成することができます。
操作はいたって簡単、危険な箇所を示す「危険、注意」「落書き」などのアイコンや「交番・警察署」「子供110番の家」といった、危険を感じた時に助けを求められる場所を示すアイコンを自由にマップ上に書き込むだけ。
今回、新宿区立津久戸(つくど)小学校3年生の授業で毎年行われている「地域安全マップ作り」に「みまもりぃぬとつくろう 安全安心マップ」を活用していただき、その模様を密着取材させていただきました。
みまもりぃぬとつくろう、安全安心マップはこちら
https://storymaps.arcgis.com/stories/3d80ecfd16334b08b1d792ee2d8fa721
地域安全マップについてはこちら
https://www.bouhan.metro.tokyo.lg.jp/02_learn/03_map/index.html
今回の舞台となる新宿区立津久戸小学校は、明治37年(1904年)の開校。なんと、今年で創立117年もの長い歴史と伝統を誇ります。
校舎はJR飯田橋駅から徒歩5分の位置に所在し、校舎のすぐ近くには、江戸時代の面影を残しながら、洗練された雰囲気を持つ神楽坂地域があり、まさに歴史と伝統ある街の小学校。
今回「みまもりぃぬとつくろう 安全安心マップ」(以下「安全安心マップ」と記載)を活用して地域安全マップ作りに取り組んでくれたのは、新宿区立津久戸小学校3年生の2クラス55人の子供たち。
密着1日目は、「安全安心マップ」について学びます。
子供たちは、事前に担任の先生から地域安全マップ作りについての説明を受けていましたが、「安全安心マップ」について説明を受けるのは今日が初めて。
今年の4月から子供たち一人ひとりにタブレット端末が配られており、今回はそのタブレット端末を使ってインターネットに接続し、都内で初めて「安全安心マップ」を活用して、地域安全マップ作りをしてもらいます。
子供たち に「安全安心マップ」の使い方を説明するのは、東京都都民安全推進本部 総合推進部 都民安全推進課の不破野課長代理。まず初めに「みんなは都庁って知っているかな?」との質問から授業に入ります。子供たちは「知らなーい!」とそっけない返答でしたが、不破野代理が都庁の写真を見せて「じゃあ、この建物はわかる?」と聞くと、子供たちからは「知ってるー!」「見たことある!」と大きな声で返事が返ってきました。
不破野課長代理は次に、「防犯」の2文字をスクリーンに大きく映し出しました。
「みんなは、この言葉の意味はわかるかな?」
子供たちからは「知ってる!!」と元気な声で返事が返ってきました。
「防犯は、犯罪を防ぐという意味です。私は、みんなのような子供たちの『防犯』が担当の仕事となり、みんなの防犯のために新しいマップを開発しました。このマップは『みまもりぃぬとつくろう 安全安心マップ』と言います。これからみんながやる『地域安全マップ作り』にこのマップを使ってもらうので、今日はみんなに説明しに来ました。」
授業では、プロジェクターで実際のマップ画面を見せながら、安全安心マップの使い方を説明します。
配布されたタブレットをすでに使いこなしている子供たちにとって、「アイコン」や「クリック」といった用語も聞き慣れたもの。難なく理解してくれます。
ひととおりの説明が終わり、「どう? みんなはできそうかな?」と不破野課長代理が尋ねると、返ってきたのは「できる!」「楽勝!」「早くやりたい!」の大合唱。面白そうな作業に興味津々のようです。
「安全安心マップ」を授業に取り入れたことについて、新宿区立津久戸小学校の3年生担任の博田(はかた)先生は次のように話します。
「津久戸小学校では、毎年3年生の授業で地域安全マップを作っています。今年は私が3年生を受け持っていたことから、地域安全マップについてインターネットで検索したところ、この東京都の『みまもりぃぬとつくろう 安全安心マップ』を見つけまして、ちょうどマップについて説明してくれるイベント(令和3年度『防犯ボランティアのつどい』)があることを知り、参加しました。イベントに参加してこのマップの機能を詳しく知り、是非授業で使ってみようと思ったのがきかっけです」
博田先生が受け持つ教室の廊下には子供たちが手書きで作成した、大きな近隣マップが掲示されています。その地図と今回取り組む地域安全マップ作りの違いを博田先生に聞いてみると、廊下に掲示されているマップは社会の授業で作ったのだそう。
「子供たちは3年生になって、授業で初めて地図というものに触れました。そこで学校の東西南北に何があるのか、周辺はどうなっているのかを理解するため、授業でこの地図を作りました。今回はそこから一歩進んで、街の中でどういった場所が危険なのか、あるいは安全なのかという学びを得てもらいたいと思っています」
この博田先生の目論見は、はたしてどうなるのでしょうか。
密着2日目の授業では、子供たちが実際に学校を出て、街の様子を調べるフィールドワークに出掛けます。
新宿区立津久戸小学校の3年生は、2クラス55人。それを概ね4人ずつの班に分け、計14班で14エリアに分割された校区を1つずつ担当して回ります。
そのうち今回密着したのは、第13班。メンバーは、班長、地図係、写真係、インタビュー係とそれぞれに役割が決まっています。
今回の津久戸小学校における地域安全マップ作りには、1班にひとりずつ、大学生ボランティアもしくは地元の民生委員の方が補助員として同行します。
子供たちと補助員の全員がいったん校庭に集まって点呼を済ませ、自分たちの担当エリアを確認すると、いざ出発です。
今回密着をした13班の担当エリアは、学校から200メートルほど離れた神楽坂通りをはじめ、東京理科大学のキャンパスなどを含む地域。入り組んだ路地もあれば大通りもあるという、なかなか変化に富んだエリアでした。
今回の授業にあたって、事前に子供たちは地域安全マップ作りに関する2つのキーワードを学習済み。
そのキーワードとは、「
たとえば、ふたつの公園があるとします。公園Aは四方が道路になっており、周囲は低い柵だけで囲まれているため、道路からでも容易に公園内全体を見渡すことができます。
一方、公園Bの四方も道路ですが、周囲を背の高い樹木が覆っているため、道路から公園内を見ることは一切できません。
こんな場合、見通しのいい公園Aは「見えやすい」ので安全だといえますが、樹木で囲われており見通しのよくない公園Bは「見えにくい」ので危険というわけです。
公園は、入口に門や扉が無いので「(誰でも)入りやすい場所」であり、そこが「(誰からも)見えにくい場所」であったとしたら、「危険」だと警戒すべき――。この授業の目的のひとつは、子供たちにそれを実体験させつつ学ぶことにあります。
また、その他危険な箇所の目安として落書きやゴミが放置されている場所があります。
そういった場所は「地域の関心が低い場所」と言え、地域の関心が低い場所は言い換えると「(心理的に)見えにくい場所」と言えます。
密着した13班のメンバーが班長の先導で到着したのは、神楽坂通り。多くの店舗が軒を連ねる商店街であり、裏通りには著名な料亭なども点在する場所です。そのメインストリートは「誰でも入りやすい場所」ですが、道が開けていて「誰からも見えやすい」ので、安全と判断できました。人通りも車通りも多く、それは人の目が多いということでもあります。加えて、歩道が広くて歩きやすいのも好印象でした。
メンバーが「あそこに防犯カメラがある!」と見つけると、さっそく写真係がタブレットで撮影し、その情報を地図係が手持ちの白地図に書き込んでいきます。あたりをよく見渡して、街灯だけでなく店舗の前などにも多くの防犯カメラが設置されていることが確認できました。
店舗に入ると、インタビュー係が活躍。「この近くで、犯罪が起きるのではないかと不安に思う場所はありますか」などと質問すると、「大通りから一本入った、人通りが少なく、夜になると暗くなる場所が怖い」等と、街の人にとって犯罪が起きるのではないかと不安を感じる場所を教えてもらうことができました。
メンバーたちはその後も何度も立ち止まりながら、あたりを見渡します。そのつど、「ここは見えにくいよね?」「そんなことないよ。見えやすい」などと全員で相談しながら、ゆっくりと歩みを進めていきます。
建物と建物の間に狭い通路があるのを見つけると、奥まで入ってチェックして、「ここは入口に扉がないから誰でも入れるし、外から見えにくいから危険かも」。商店街を抜けて東京理科大学の前まで行くと、校舎の前は芝生が植えられた庭のようになっていて、広くて見通しがいいから安全――。
街の様子を詳しく見ながら歩くのが初めてという子供たちにとって、すべてが初体験と新発見の連続です。
次に訪れたのは公園。公園の前の道路が坂になっていて、公園に入るには階段を上がる必要があります。しかも、出入り口付近には樹木も植えてあるため、道路からの視線が公園内に届くことはありません。つまり、ここはさきほどの公園Bと同じで、「入りやすく、見えにくい」というキーワードがそろっていたわけです。
もちろん、13班のメンバーはそのことをしっかりと記録。最後に、自分たちの担当エリアからは少し外れているけれど、惣菜屋さんが教えてくれた「狭くて暗い道」の場所を確認したところで、本日のフィールドワークは終了。気温の高い日だったため、水筒の飲み物を大量消費しながらの大冒険でした。
密着1日目の「座学」、2日目の「フィールドワーク」と続いてきた新宿区立津久戸小学校の地域安全マップ作りも、いよいよ実際のマップ作り。これまでに得た情報を集約して、本サイト上の「みまもりぃぬとつくろう 安全安心マップ」を使って地域安全マップ作りに取り組みます。
博田先生から、「小学生が授業でこのマップを使うのは、東京都全体で津久戸小が初めてです。東京で初めてなんだから、みんな頑張ろうね」とハッパをかけられてスタート。各班協力して作業を進めていきます。
まずは、各班がフィールドワークで収集してきた情報の取りまとめから、自分たちの担当エリアの中で、どの場所が危険だったのか、あるいは安全だと思えたか――。撮影してきた写真をベースに、それぞれの場所につけるコメントを作成していきます。
この作業は、これまで習ってきたことの集大成。「入りやすい/入りにくい」と「見えやすい/見えにくい」のキーワードを使って説明するというのがポイントです。
取材班がフィールドワークに密着した13班が撮影してきた写真は、全部で12枚。補助員の大学生ボランティアさんにサポートをしてもらいながら、4人で手分けしてコメントをタブレット端末を使って書き出していきます。
単純に「入りやすいから」や「見えにくいから」だけではなく、何故入りやすいのか、何故見えにくいのかなど、しっかり理由づけをして「危険」「安全」を分類していくことがとても重要。
仕上げは、それぞれがタブレットのノート機能にまとめた「危険な箇所」「安全な箇所」をインターネット上で利用できる「みまもりぃぬとつくろう 安全安心マップ」のマップ上にアイコンで書き込んでいきます。
子供たちが楽しみにしていたタブレット端末を使っての作業、みんな目が生き生きとさせ、集中して作業していきます。
「注意」「危険」のアイコンだけでなく具体的な「落書き」「放置自転車」などを表すアイコンや「まわりから見えにくい」や「誰でも入れる」などの地域安全マップのキーワードを表すアイコンを駆使し、自分たちが見つけた「危険な箇所」をマップに書き込んでいきます。
また、「危険な箇所」だけでなく、たくさんの「安全な箇所」もたくさん見つけてきてくれました。
マップ上には「交番」「子供110番の家」「防犯カメラ」のアイコンが多数書き込まれているほか、「安全」を表す風船を持ったみまもりぃぬのアイコンも使ってくれています。
博田先生が、「これまで3回に分けて、この授業をやってきましたが、みんなは楽しかった?」と問いかけると、子供たちからは「楽しかった!」「またやりたい!」と元気な声が返ってきます。その一人ひとりの表情には、「満足」の二文字が浮かんでいるように見えました。13班のメンバーたちも、みんな笑顔です。
そんな様子を見て目を細めつつ、博田先生はこう話してくれます。
「子供たちは3年生になって初めて授業で地図に触れ、周辺地図を作ったわけですが、そのときはまだ『この道は狭い』とか『暗い』といった程度の認識でしかありませんでした。それが今回はもう一歩進んで、『入りやすい』や『見えにくい』という言葉を伴って、街の中の『危険な箇所』『安全な箇所』をもっと深い理解として頭に入れることができました。それだけでも、大成功といっていいと思います」
こうして、新宿区立津久戸小学校3年生55人の大冒険はひと段落。よく知った近所の街のあちこちにも、危険な場所は静かに潜んでいます。そのことを、4年生になっても5年生になっても、ずっと忘れずにいられることでしょう。
新宿区立津久戸小学校の地域安全マップ作りの授業の総仕上げは、発表会です。自分たちが調べて作ったマップを同級生に向けて発表します。
各班は、すでに大きくプリントアウトされた「みまもりぃぬと作ろう 安全安心マップ」の画面に写真とコメントを貼ったオリジナルの地域安全マップを作成済み。
その力作を各班4分の持ち時間で説明するというのがルール、まずは3年1組の1班から7班が自分たちの作ったマップが貼られたボードの前に立って発表し、3年2組の8班から14班が発表班のボードの前を回って発表を聞いていきます。
各班の発表スタイルは、実にさまざまです。全員で声を合わせて話す部分と、一人ひとりで話す部分を分けて抑揚をつけたりするなど、なかなか本格的。
マップのほうも、危険な場所を示す矢印は赤、安全なら青などと色分けする工夫があったりして、とても見やすく作られていました。
「ここは誰でも入れて、奥のほうへ行ったら見えにくいから危険」
「このコンビニは24時間営業で、いつも人がいるから安全」
「放置自転車があるから地域の関心がない、この場所は注意したほうがいい」
などと、子供たちは的確な報告を続けました。
各班の発表の最後には、一人ひとりが感想を発表します。
「危険な場所と安全な場所の見分けができるようになった」
「キーワードを使って作文するのが難しかったけど楽しかった」
「ちゃんと自分の役割ができたのがうれしかった」
「今後は危険なところは避けて、できるだけ安全な道を通りたい」
「どこかに行くときは、必ず大人の人と一緒に歩くようにする」
「みんなで協力して地図を作れたことに達成感があった」
「インタビューで街のことを教えてもらって、よく知ることができた」
「アイコンを書き込むのが楽しかった」
などなど。どれも大人顔負けの意見ばかりでした。
でも、ある班の子が言った、「僕たちが回ったのはお店のない場所だったので、なかなかインタビューできなくて大変だった」との感想には、ちょっと同情も。平日午前中の住宅街には人通りが少なく、声をかける人が見つけられなかったようです。
この日の発表会には、神楽坂通り商店会長の石井要吉さんも参加し、各班の発表に耳を傾けました。
ご自身も津久戸小学校に通っていたと言う大先輩の石井さんは、
「私たちはいつも、地域の皆さんの安全・安心をどうつくるかということを考えています。たとえば、神楽坂の通りには今、全部で45本の街灯が立っています。そのうち14本に防犯カメラがついていますが、今後はその数をもっと増やす予定ですし、古くなった街灯そのものもどんどん新しくしていきます。こんな風に、神楽坂の街や津久戸小の子どもたちの安全のために手を尽くしていきますから、皆さんも協力してください」
などと話してくれました。
今回の一連の津久戸小学校地域安全マップ作りに密着した、東京都都民安全推進本部 総合推進部 都民安全推進課の藤原朋子課長も、子供たちに声をかけました。
「みんなが一生懸命にマップを作っている姿を見て、すごく感動しました。ふたつのキーワードをしっかりインプットしてもらえたし、危険な場所にはなるべく近づかないようにするということもわかってもらえたと思います。そうして危険な場所を知るだけではなく、この街のいいところをいっぱい見つけてくれたことも、とてもうれしく感じました」
一連の授業を終えて、博田先生は次のように話してくれました。
「今回、子供たちの意識はどちらかといえば“危険”のほうに傾いていました。だからといって、家から一歩も出られないほど危険かといえば、そうではありません。この街にはいいところがいっぱいありますし、“安全”な面もたくさんあります。そこで次回は今回からもうワンランクアップして、この街のいいところ・好きなところを探すといった内容の授業をやってみようと考えています」
今春から運用を開始した「みまもりぃぬとつくろう 安全安心マップ」は、こうして新宿区立津久戸小学校での地域安全マップ作りに活用していただきました。授業を受けた津久戸小学校3年生の子供たちが「防犯」や「安全」を楽しく学んでくれたのだとしたら、みまもりぃぬも心から喜んでいることでしょう。
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