東京都 防犯アイデアソン
~「東京の治安を考える」アイディア・ワークショップ~
平成28年11月6日(日)に東京都防犯アイデアソン~「東京の治安を考える」アイディア・ワークショップ~を開催しました。
東京都では、平成28年10月24日(月)に防犯ポータルサイト「大東京防犯ネットワーク」をリニューアルし、Web-GIS(地理情報システム)を導入し、地域の犯罪・防犯情報をはじめ、都や区市町村の施策の実施状況などをマップでわかりやすく発信しています。また、あわせて都内の町丁字別犯罪情報等をオープンデータ化して民間の活用を促しています。本イベントはこのリニューアルを記念して行われました。
イベントには、データの活用に精通した技術者の方に加え、普段地域で防犯活動を行っている方や学生、教員、行政職員等約70名が参加しました。
当日の流れは以下のとおりです。
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時間 |
内容 |
① |
10:00-10:30 |
導入(大東京防犯ネットワークの紹介・提供データの説明) |
② |
10:30-11:00 |
オープニング・トーク |
「オープンデータで犯罪を減らす・防ぐ ―情報発信・共有の役割―」 科学警察研究所犯罪行動科学部犯罪予防研究室長 島田貴仁氏 |
「データを元に軽犯罪(ポイ捨て)を減らす事例の紹介」 株式会社ピリカ 代表取締役 小嶌不二夫氏 |
「女性のためのかわいい防犯アプリを作りました」 梶田真実氏 |
③ |
11:00-12:00 |
グループワーク |
東京の治安を考える |
④ |
12:00-13:00 |
昼食 |
⑤ |
13:00-14:00 |
グループワーク |
分析の時間 |
⑥ |
14:00-15:00 |
対策の時間 |
⑦ |
15:00-16:00 |
発表準備の時間 |
⑧ |
16:00-17:00 |
発表の時間 |
⑨ |
17:00-17:30 |
表彰 |
⑩ |
17:30 |
記念撮影・解散 |
① 10:00~10:30 導入講義
安全・安心まちづくり課長
青少年・治安対策本部の安全・安心まちづくり課長より、リニューアルした「大東京防犯ネットワーク」についての説明やオープンデータについての説明がありました。
② 10:30~11:00 オープニング・トーク
・オープニング・トーク①
島田室長
- テーマ:
- オープンデータで犯罪を減らす・防ぐ
―情報発信・共有の役割―
- 講演者:
- 科学警察研究所犯罪行動科学部犯罪予防研究室長
島田貴仁氏
島田室長からは、次のようなお話がありました。
防犯ボランティア活動をされている方からは「どこでどれだけの活動をしたらよいか分からない」といった声をよく聞きます。また、無施錠の玄関や窓から空き巣に侵入される、といった予防行動の欠落に起因する犯罪被害が目立ちます。
これらの問題を解決するためには、自治体や警察、防犯ボランティア団体、都民ひとりひとりが、「情報」をもとに連携を深めてゆくことが有効です。具体的には、①パトロールする前に犯罪の多発地区・多発時間帯を調べる、②特殊詐欺の電話や、子供に対する声かけといった犯罪の前兆情報を地域で共有して備える、③オープンデータを利用して、親しみやすいアプリを作って都民に予防行動を呼びかける、といったことが考えられます。
小嶌氏
・オープニング・トーク②
- テーマ:
- データを元に軽犯罪(ポイ捨て)を減らす事例の紹介
- 講演者:
- 株式会社ピリカ 代表取締役小嶌不二夫氏
小嶌氏からは、軽犯罪の一つであるポイ捨てを無くすために京都大学の研究室から生まれた株式会社ピリカの取り組みから、これまで計測が難しかったポイ捨ての深刻さをスマートフォンなどのICTを用いて調査・可視化している事例の紹介がありました。
また、調査結果を元にポイ捨てに影響する因子(コンビニや自動販売機など)を見つけ出し、新しいポイ捨て対策を生み出す事例についても紹介がありました。
梶田氏
・オープニング・トーク③
- テーマ:
- 女性のためのかわいい防犯アプリを作りました
- 講演者:
- 梶田真実氏
梶田氏からは、次のようなお話がありました。
オープンデータを使って、夫婦の思いつきから女性のための防犯アプリを作ってみました。かわいいキャラクターで軽犯罪を表現、見やすいマップ機能、パンチ機能でユーザーとインタラクション、の3つにこだわりました。サービスに挑戦してみて大切だと感じたのは、徹底的にユーザーにとってのハードルを下げていくことと、すべてのデザイン(UI、機能、キャラクター、世界観、サービス)に必要性があって有機的につながっているような最小単位まで落とし込むことです。その後、物理学者夫婦の私たちは集めたデータをもとに犯罪予測のための独自手法を開発しています。オープンデータによって新しい挑戦が世の中に増えて行くはずです。
③ 11:00~16:00 グループワーク
充実した座学の後は、いよいよ実践。その内容を詳しく報告していきましょう。
当日は様々なデータが提供されました(提供されたデータ一覧は
こちら)。
国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの庄司昌彦准教授をファシリテーターに迎え、東京の治安をテーマに、各自で「東京の安全」にとって重要なテーマを考え、同じテーマに関心のある人で集まり、10のグループをつくり、グループ・ワークを始めました。
各グループがテーマに沿ってディスカッションを行い、最後にまとめて壇上で発表する……という流れです。
各グループに与えられたキーワードは――
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
庄司准教授
- ① 子供、登下校
- ② コミュニティ、地域のつながり
- ③ 交通、自転車、放置
- ④ オープンデータ
- ⑤ 高齢者
- ⑥ 防災
- ⑦ 外国の方、文化
- ⑧~⑩ 防犯、環境改善or予測、社会制度、パトロール、横連携、費用対効果
また、発表する内容には、次の要素を含めるというルールも定められていました。
- ① ひとことで内容がわかるタイトル
- ② どんな内容に取り組み、どんな結果を出すか
- ③ アイデアの概要(5W1H、具体的に!)
- ④ 特徴的な数字(発見した課題、目標など)
庄司准教授の説明の後、参加者たちは早速ディスカッションに取りかかりました。各グループのメンバーは4~6人。それぞれ、自分の知識や得意分野を十分に活用した議論が行われていきます。
パソコンを使ってデータ分析をする人、画像やグラフを手早く作成する人、イラストを描く人、地域パトロールなどの経験を語る人、職業的な知識を披露する人……静かながらも熱気にあふれた時間は、あっという間に進んでいきました。誰かが仮説を立て、別の誰かがそれを検証し、さらに別の誰かが一貫した意見や提案の形にまとめていく――。それぞれスタイルは異なるものの、どのグループもメンバーたちが協力し合いながら、ひとつのアイデアをまとめていきます。テーブルの脇にひとつずつ与えられたホワイトボードが付箋だらけになったグループもあったほどです。
忙しそうな参加者に、ちょっとだけ声をかけてみました。
「地元で防犯ボランティアの活動をしています。それなりに知識も経験もあるつもりですが、皆さん詳しい方ばかりで驚きました。いろいろ教えていただいて大変ためになっているので、何かを得て帰りたいと思います」という方。あるいは、「大学でボランティアサークルに入っています。まだ経験不足ですので、サークルのメンバーとしても私個人としてもレベルアップになると思って参加しました。専門家の方のお話もグループワークも勉強になることばかり。来てよかったです」という大学生。皆さん、充実した時間をとても楽しそうに過ごしていました。
やがて、白熱した時間も終了。各グループの代表者が登壇しての、成果の発表です。各グループは、それぞれの取り組みを次のようにまとめ上げました。
- ① 子供のユートピア
- ② マップでつなげる地域のチカラ
- ③ 放置の何がいけないの?
- ④ 防犯オープンデータのユニバーサルデザイン化
- ⑤ 高齢者の笑顔を守ろう
- ⑥ 発災時防犯 空き巣MAP
- ⑦ 2020年に向けた外国人向け防犯情報の拡充
- ⑧ 世界一安全なパトロールに向けて
- ⑨ コンビニ数データと犯罪予測発生確率
- ⑩ 放置自転車みまもりぃぬ
発表に与えられた時間は、わずか4分。分析したデータ画像を使って発表するグループもあれば、手描きのイラスト満載のホワイトボードで発表するグループもありました。
発表後には表彰です。順位のつけ方もユニークです。
「各グループ単位で、よかったと思う3つの発表を選ぶ」というもの。自分たち以外の9グループのうち、よかったと思う3つの発表をグループ内で討議して決めます。
その結果、選ばれたのは――
- 最優秀賞:
- グループ① 子供のユートピア
- 2位:
- グループ⑥ 発災時防犯 空き巣MAP
- 3位:
- グループ⑧ 世界一安全なパトロールに向けて
- 健闘賞:
- グループ⑨ コンビニ数データと犯罪予測発生確率(パトロール経路の提案)
最優秀賞を受賞したグループの皆さん
最優秀賞のグループ代表としてコメントしたある高齢の男性は、「私は長く地域パトロールをやってきた経験がありますが、毎週頑張ってきたことが報われたような感じがしています。」と嬉しそうに話しました。
講評は、まず東京都青少年・治安対策本部の廣田本部長から「様々なアイデアの発表があり良かった。今後もサイトを利活用していってもらいたい」と参加者に語りかけました。
続いて筑波大学システム情報系の川島宏一教授が「それぞれ新しい切り口があって私も刺激を受けました。このつながりを大事にして、今後の研究や行動に活かしてほしいと思います」と、参加者たちに語りかけました。
東京都青少年・治安対策本部 廣田本部長
筑波大学システム情報系 川島教授
ファシリテーターの庄司准教授も、「防犯をテーマにしたアイデアソンが開かれるのは、おそらく初めてのことではないでしょうか。皆さんの視点には強い刺激を受けました。皆さんもぜひこういった活動から何らかのヒントを得て、各地域に広めていってほしいと思います」と締めくくりました。
今回のイベントでは、「オープンデータがもっとたくさんほしい」といった声も聞かれました。まだまだ始まったばかりのプロジェクト。データが今後も更新されグレードアップしていくことが望まれました。
防犯アイデアソンの様子を動画でご紹介します。
1 導入・オープニングトーク編(約49分)
2 グループワーク編(約21分)
3 成果発表・表彰編(約71分)