|
《記事の要約》 |
- 明治大学の学生防犯ボランティアグループ「Relief」は、大学周辺の地域住民の方々に少しでも「安心」を届けたいという思いとともに、学生が短時間で参加できる防犯活動を目指して立ち上げられました。
- 代表の高島一樹さんは、自身のボランティア経験から、もっと気軽に参加できる活動を模索し、「パトラン」という防犯ボランティアにたどり着いたとのことです。
- メンバーたちは、友達と一緒に活動する楽しさや、街の小さな変化に気づく喜びを感じており、今後も更なる地域社会への貢献を目指しています。
|
|
|
明大前駅の改札口を出て甲州街道の長い歩道橋を渡ると、広大な敷地に近代的な校舎が建ち並ぶ和泉キャンパスが待ち構えています。取材班が正門に到着するやいなや、「こんにちは!」と元気な声で出迎えてくれた5人が、学生防犯ボランティアグループ『Relief』(リリーフ)のメンバーたち。今年3月に立ち上げたばかりなのに、すでに総勢20人ものメンバーを擁するという、まさに伸び盛りのグループです。 |
|
~グループの立ち上げ~ |
さっそく代表の高島一樹(たかしま かずき)さんに結成の経緯を聞くと、こんな答えが返ってきました。
「何か世の中の役に立つことをしたいと思って、学童福祉や障害者福祉などのボランティア活動に参加したことがあるんです。そのとき、そういった活動というのは結構、朝から夜まで長時間の拘束をされるケースがあるということを実体験しまして……。自分としては積極的に活動したいんだけど、丸一日も参加するのは少し難しい。そこで、もっと短時間に集中してというか、空いた時間に気軽に参加できるようなものはないだろうかと探すうちに、学内のボランティアセンターの人が紹介してくれたのが『パトラン』による防犯ボランティアだったんです」
パトランとは、こちらのポータルサイトにたびたび登場しているとおり「パトロール」と「ランニング」を組み合わせた造語です。それまでパトランという言葉を聞いたこともなく、ランニングを趣味にしているわけでもない高島さんでしたが、内容を知るとすぐに「これだ!」と直感。迷わず、所属していたダンスサークルの仲間や同級生たちに声をかけ、集まったメンバーとともに立ち上げたのが、今回ご紹介する『Relief』というわけです。
Reliefの由来について尋ねると、
「Reliefは安心という意味です。私の印象として明大前駅付近は夜中まで騒いでいる学生も多く、地域住民が不安に感じることもあるかと思い、私達の活動を通して少しでも地域住民の方々に「安心」を届けたいという気持ちを込めて名付けました」
という熱い想いを伝えてくれました。
|
高島一樹さん |
|
チームを組んだのはいいものの、ノウハウが一切ありません。そこで高島さんが教えを乞うたのが、「パトラン東京」でした。
「パトランをやってみたいと連絡したら、代表の渡部信隆さんがわざわざ大学まで来てくれて、一緒に走りながら丁寧に手ほどきしてくれました。本当に感謝しています」(高島さん)
以来、週に1回の活動を続け、5月末からは週2回に増やすそうです。走るのは和泉キャンパスの周辺ですが、高島さんは「最初のうちは、パトランも初心者ですし、この街の地理をぜんぜん知らなかったので、どこを走ればいいのかもわからなかったんです」と話します。
高島さんは地方出身で、現在は明治大学の寮に入居しています。「キャンパスの裏門から徒歩30秒の場所にあって、通学には最高」という寮の立地は大歓迎なのですが、この好環境が逆に高島さんがパトロールを行うにあたって不利なことになっていたというのです。
「学校と寮が隣接しているので、通学で歩く必要がありません。その結果、付近のどこに何があるか、地域にどんな方が住んでおられるのかを見聞きする体験もできていなかったんです」
と、高島さんは笑って話してくれました。
これでは、パトランで走るコースの設定もできません。そこで高島さんは、地元の人たちや民間交番である「明大前ピースメーカーズボックス」のスタッフに相談するとともに、近くにある小学校の場所などを念頭に入れながら、「どの時間帯に、どう走るべきか」の答えを探っていって、今ではご近所や商店街の方から挨拶されるなど機会が増えるなど、少しずつパトロールの形が見えてきたそうです。
|
明大前ピースメーカーズボックス |
|
~仲間とともに~ |
メンバーの竹本鈴菜(たけもと すずな)さんは、これまで十数回の活動に参加してみた感想を次のように話してくれます。
「パトランで一番いいのは、仲のいい友達と一緒にできるところです。知らない人に大きな声で挨拶するなんて、私ひとりでは絶対に無理ですから。あとは、たとえば壊れた街灯などについても、誰が先に見つけるかをゲーム感覚で競ったりしています。こんなことができるのも、仲間がいるからです。街頭なんて、今までは気にもしなかったのに、この活動を始めてからなんだかいろいろ気になるようになっちゃいました」
同じくメンバーの宮本修也(みやもと のぶや)さんは、別の利点を話してくれました。
「空き時間の有効利用ができる点がいいと思っています。僕たち学生には必ず、授業のない“空きコマ”があるので、その空いている時間でサッと走ることができるのは、パトランの大きなメリットです」
この意見に重ねて、高島さんが今後の目標をこう教えてくれます。
「まずは、メンバーの人数をもっと増やすこと。そして、たとえば月曜日に空きコマがある人は月曜チーム、火曜日に空きコマがある人は火曜チームというふうに分担して、月曜日から金曜日まで誰かが必ず走れるようにすること。こういう活動は、毎日欠かさずにやることが大切だと思っているので、極力そういう編成に近づけることが目標です」
この言葉に宮本さんが「いずれは、地元の方たちとコラボもしたいよね」と加えると、高島さんは大きくうなずいていました。
|
竹本さん(左)と宮本さん |
この日がパトラン初参加だという高田愛日(たかだ まなか)さんと齋藤小夏(さいとう こなつ)さんはそれぞれ参加した理由について、「私は中学高校とボランティアをやっていたこともあって、大学でも何かボランティアをやってみたいと思って参加しました」「このパトランという活動を代表の高島さんから聞いて、何だか楽しそうだなと思ったのがきっかけです」とこの活動に対する想いを話してくれました
|
齋藤さん(左)と高田さん |
|
~若い力の活躍~ |
正門前、時刻は午後6時過ぎ。授業のため教室に戻った宮本さんを除いた4人が、赤いTシャツ(またはビブス)を身にまとってパトロールに出発しようとしています。初参加組の2人も「初めてなので少し緊張していますが、このワクワクを楽しみたい」と笑顔を見せてくれています。
そこに、「じゃ、行きまーす!」と高島さんの合図。
夕焼けに染まりかけたオレンジ色の街に、若い力が駆け出していきました。
|
正門から出発 |
笑顔に赤が似合います |
|