東京都は、子供の犯罪被害防止能力の向上を目指し、平成17年度から犯罪機会論に基づく「地域安全マップづくり」の指導者育成に取り組んでいます。
都が推奨する地域安全マップづくりとは、子供自身が「安全な場所や危険な場所」を景色を見て判断できるようにするものであり、これまでの不審者マップや犯罪発生マップとは異なります。このため考案者の小宮教授(立正大学)から直接、指導方法を学ぶ講習会を開催し、理解を深めていただいています。
7月22日に引き続き、7月28日も立川市子ども未来センターで講習会を開催しました。夏休みの始まりということもあり受講者も数多く、教員や児童館職員、スクールサポーターなど60名の方に受講いただきました。これに立正大学の学生約20名が補助指導員として加わり、とても活気あふれる講習会となりました!
講義 <事前指導>

「犯罪者は、「入りにくい、見えやすい場所」で子供に近づき、接触してくるので、注意・警戒が必要。子供への犯罪の多くには「騙し」が使われるため、騙されないための指導も必要。
また、駅前広場などの人がたくさん集まる場所は、人目があるため犯罪者も子供に接触してこないだろうと考えてはいけない。実際は、誰も子供のことを見ていない。
こうした場所は心理的に見えにくい場所なので注意が必要。」と説明がありました。
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受講者もメモを取り、熱心に聴き入ります! |
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フィールドワーク <まち歩き>
事前指導の後、8つのグループに分かれてフィールドワークに出発!
今日だけは先生方も童心にかえり約1時間のまち歩き。各グループには立正大学の学生が寄り添い、講義で学んだ2つのキーワード「入りやすい」「見えにくい」をもとに、危険な場所や安全な場所を探しました。
受講者一人ひとりに、班長、副班長、写真係、地図係、インタビュー係などの役割が与えられ、道行く先々で「この場所はどうかな」と立ち止まっては意見交換。先生や学生は答えをすぐには教えてくれません。自分の力で「景色解読力」を養うことが大切です。
また、プライバシーに配慮しながら写真撮影をしました。写真は景色を再現するもので、その後のマップづくりでメンバーとの認識の共有に役立ちます。道路や公園を中心に見て歩くほか、「この辺には犯罪にあうかもしれない場所はありますか?」と地域の方へインタビュー。地域の大人と子供のコミュニケーションづくりの重要性についても学びました。
マップづくり

会場に戻り、ランチ休憩した後はいよいよマップづくり!
模造紙に自分たちが歩いたコースをフリーハンドで描きます。景色で安全・危険を判断する能力を身に付けることが目的なので、正確な地図は不要です。
小宮先生は、「景色で安全・危険を判断する能力を身に付けることが目的なので、正確な地図は不要です。「「特定の場所を、ここは危険」と明示することが目的ではありません。
そうした地図は、近隣の人に不快な思いをさせることもある。火星や木星の地図でもいい。写真とコメントだけでも十分に効果はある。」と説明されます。
その後、安全な場所や危険な場所を選んで写真を貼ります。そしてマップづくりで最も大切なコメント作成をします。写真の景色がなぜ安全、また危険と考えるのか。場所ごとに、必ずキーワードを入れながら付箋紙に記入します。この過程で子供には景色解読力が定着します。学校では児童一人ひとりに時間をかけて、理解度を確認することが必要となります。マップづくりは、色紙やマジックを使い、デザインや色彩を工夫すると、子供たちも楽しく学ぶことができるでしょう!
こうした取組により子供に景色解読力が備わると、近所や通学路以外の場所に出掛けたときも危険な場所には近づかない、一人では行かない、十分に注意するという危機回避能力が発揮されます。
小宮先生は「100%安全または危険な場所などない。大切なことは、危険と思われる場所では注意することが必要」と語ります。
発表
グループごとに、代表者が作成したマップについて「入りやすい」「見えにくい」というキーワードを用い、なぜこの場所を危険と考えたのか。また安全と思ったのか、受講者全員に説明します。
会場からは「なるほど~」との声が。 |
発表者に加えて、学生も今後の改善点などをコメントします。 |
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♪受講者の皆さんが作製した地域安全マップ♪
まとめ

本講習会では、教員やスクールサポーター等が自らが児童・生徒に指導する一連の内容を実習し、体得します。受講者アンケートでは、「このマップづくりは、子供の犯罪被害防止能力の向上に役立つ」と回答された方が今回も多数見受けられました。
講習会の最後には、一日の振り返りとして、小宮先生により択一式の防犯クイズが5つ出題され、認識を深めました
その後は質問コーナー。「地域には、安全と危険が同居する場所もある。また、メンバーによって安全、危険が分かれる場所もある。そうした場所はどう考えればよいのか。」との質問に対し、小宮先生は「どちらも正解。どちらかの意見だけが正しいということはない。景色を見て、あれっ?どうかなと考えることから、景色解読力は身に付く。そのように意識することがとても大切」と回答。そして「マップは作るが、そのことが目的ではない。」と明言。子供たちは学校や遊びに行くとき、地図を見ながら歩く訳ではない。その場の景色を見て、安全・危険を判断する能力を育てることが重要と力説されました。
地域安全マップづくりは、そうした能力を子供たちが身に付けるのに、とても有効な取組です。

次回は8月4日に調布市内で行われた講習会の様子をお伝えします!